衣服は肌と接触するため、合わないと常時かゆみを引き起こす刺激になってしまいます。
アトピーの症状がある方ならうなずけますよね?
洋服を選ぶ時、
つい気になるポイントではないですか?
では、素材によって違いはあるのでしょうか。
一般に推奨される素材としては「綿、絹」。
避けるべき素材としては「羊毛、化学繊維(化繊)」。
それぞれ挙げられることが多いようです。
これらの素材がそれぞれ、アトピーを改善させ
たり悪化させたりするのか、検証を試みた論文
があります。
綿〜
まずは綿です。
「綿の服が良い」という指導がこれまで良くさ
れていましたが、実は十分な根拠には乏しい状
況でした。
例えば、アトピーの症状悪化と衣類の素材につ
いて研究した論文の1つは、総論で「綿は、こ
すれる動きに対して過敏な皮膚を刺激することがある」とすら述べています。
羊毛〜
羊毛は「刺激が多く避けるべき素材」と考えら
れてきました。
しかし例えば、生後4週~3歳のアトピー患児
39人をランダムに2群に分け、極細にした羊毛
製の服、綿製の服を6週間ごとに切り替えて着
用して比較したという報告があります。
絹〜
海外のアトピーのガイドラインで言及されてい
る、皮膚への刺激が少ないと考えられてきた絹
服はどうでしょう。
300人を標準的なケアのみの群と、標準的なケ
アに加えて絹製の衣服を着用する群にランダム
に分けて比較した試験では、6カ月間のアトピ
ーの改善には差がないという結果が得られてい
ます。
化繊〜
化繊は肌を刺激するので着用しない方がいいと
よく考えられています。
化繊であるエチレンビニルアルコール製と綿の
下着を使い、21人のアトピーの子どもをランダ
ムに2群(化繊群11人、対照群10人)に分け4
週間着用してもらうという比較試験を実施した
報告があります。
すると、化繊のほうがアトピーの改善度が良か
ったという結果でした。
銀コーティング
銀でコーティングした繊維製の素材も、一部で
勧められています。
アトピーがあると、皮膚で黄色ブドウ球菌や真
菌が増殖して炎症を引き起こすなどすることが
あります。
銀は抗菌作用があるためにアトピーに有効かも
しれないと考えられていたのです。
上記の報告では、銀コーティングは確かに表皮
の菌に対する殺菌作用があったようです。
ところが、銀コーティングをした繊維を洗濯し
たあとに電子顕微鏡で確認すると、多くの素材
で銀コーティングは損なわれていたので、その
ような製品はアトピー患者には勧められないと
する報告もあります。
素材よりも肌触りが大切
綿、羊毛、絹、化繊、銀コーティングと見てきました。
これらの結果からは、「綿がよくて羊毛はだめ」などと一概には言えないようです。
そして、銀のコーティングも長持ちしないとい
う結果もあり、過信はできないようですし、海
外でよく言われる「絹がいい」という説も大規
模な臨床研究で有効性が否定されています。
最終的には柔らかい衣服で、ごわごわした素材
やタイトなデザインを避けるべきだというガイ
ドライン通りの指示に落ち着くと言えるでしょ
う。私は、「素材にこだわらず、肌触りが良い
ことを推奨する」という結論にまとめてよいの
ではと考えています。